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忘れられない出来事
2011年4月の記録


素敵なお別れ

2011年4月8日

とても強い余震から一夜明けた今日、義父の火葬が無事に執り行われました。
石巻の安置所から仙台市内の安置所へ移り、そこからまた二週間。さらに山形県米沢市の火葬場へ移され、今日やっとこの日を迎える事ができました。

出棺までの時間は私は義父のそばから離れられずにいました。涙がずっと止まりませんでした。義父の顔は、だいぶ傷んでしまった為か見慣れた表情ではなかったのです。それでも顔を見た瞬間、義父との思い出が、たくさん蘇ってきました。

私が「お父さん」と呼べる人は、この世でたった1人、実家に居る父だけ。今まではそう思っていましたが、棺桶を抱いて何度も叫んだ「お父さん」のなかにも、唯一無二の存在を感じました。

最後のお別れでは、子供達と一緒に義父の胸元に花を添えました。 「じっちにね、天国にも沢山、お花を咲かせてねって、お願いするんだよ」 そう子供達に話すと娘は、「じっちのチューリップ、また今年も咲くかなぁ~」と言って周囲を和ませました。 じっちが咲かせたチューリップ、毎年楽しみにしていたから思い出したのですよね。

主人は、その光景を背にして大粒の涙をこぼしていました。 その後、私と子供達、私の両親は移動時間と距離を考慮し、仙台の火葬場でお別れをしました。 「パパ達はね、天国につながる扉までね、じっちを送っていくんだよ。すごーく遠いから、こっちゃん達は、ここで、ありがとバイバイしようね」 …私達は、走り出す霊柩車が小さく小さく見えなくなるまで見送りました。

「じっち~バイバイ~ありがとうバイバイ…」
出棺を終えると、不思議と胸がスッと軽くなり、清々しい気持ちになりました。 その夜子供達は、主人が火葬先の米沢から帰る前に床に就きました。

今日は、パパのお陰で素敵なお別れをすることができたね。私は枕元で、子供達に話しました。 すると、毎晩のように「じっちに会えないよ…」と泣いていた娘が、不思議とあっという間に眠りに就いたのです。 義父が天国に向かってやっと旅立つ事ができた日、息子は二歳の誕生日を迎えました


泥と瓦礫に勇気の欠片

2011年4月12日

自宅から非難する時、一瞬 家の外壁に何かがぶら下がっていているのが見えたのです。たしかあれは、幼稚園の制服かもしれない。ハンガーにかけていた制服なんて、何処かに流れてしまったに決まっていると、はじめは誰も信じてくれなかったのですが、やはり私が思った通り娘が毎日着ていた幼稚園の制服でした。

泥まみれになった制服は、理の兄が綺麗に手洗いをしてくれました。明日から着て行けるくらい、元通りの色になっていました。 幼稚園に通わせられるのは、まだまだ先かなと、娘にも話していたのですが、1日も早く石巻に帰りたい!幼稚園に通わせてあげたい!という気持ちが急に強くなってきました。

自宅には まだまだ、除けても除けても床が見えない程の瓦礫や家具が重なっています。泥は乾きかき出すと粉塵が舞います。その中には、私達家族を繋ぐ勇気の欠片達がまだまだ沢山埋もれているかもしれないのです。


思い出いっぱいの靴

2011年4月17日

今日は子供達を連れて、仙台市街へ買物に出掛けました。娘の靴と私の化粧道具を少しだけ買い揃えることができました。

この靴は、大きな避難所に着いた時にボランティアの方に頂いた娘の靴です。 今日、新しい靴を買い、やっと洗うことができました。時間をかけて洗いましたが、泥色がなかなか抜けません。
頂いた時には、サイズが大きかったのに、1ヶ月間で、ややつま先が窮屈になっていました。この1足しかなかったから、だいぶボロボロです。 「これは ひなんじょで もらったから」 娘はそういって、新しい靴を買うことを喜ばなかったのですが、街の靴屋さんに入ると好みの色を恥ずかしそうに指差しました。

早速 新しい靴を履いて店を出ると、 「いただいたくつは ようちえんの あそびぐつにしてね」…園庭でお友達と遊ぶ時に履くというのです。
いくら綺麗に洗っても、ボロボロで絵柄も欠けているし、いつもの私なら迷わずお払い箱なのですが、この靴に出会うまでの日々のこと、そして1足の靴を娘が大切に履いてきた1ヶ月間を思い、これからも大切に履いて履けなくなってもずっと大切にとっておこうねと、娘と約束をしました。



震災3日目。自宅二階から避難する時、娘は裸足で私のTシャツを重ね着して紙おむつを履いていました。移動先の会館では、大人の靴下を履かせてもらい、5日目にはその足で瓦礫の山を超えて歩きました。泥水が引かない道で近所の方におんぶされた時には、何処からか流れ出た大きなスリッパを履いていました。 やっと辿り着いた大きな避難所でこの靴に出会い、本当に嬉しそうに駆け出して行った姿は、ずっとずっと忘れられません。

私達親子は、こうやって成長していくのですね。

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